陸章 毛花売りの少女

若いおねーちゃんもヘンなのだ

ガイジンのお客さんは逐一ヘンなのだが、我が国にも、ヘンなお客さんはいる。しかもオバさんばかりではなく、筆者より歳下のおねーちゃんもいたりするのだ。ワリとお得意さんな感じのおねーちゃんで、頻繁に商品を買ってくれるのはアリガタイのだが、このヒト、何故だかしきりとウチに電話してきたがる。商品の注文だけなら別に構わないのだけれど、注文が終わると、世間話みたいなのをダラダラと始めるのだ。

基本的に筆者は電話がキライだし、先方も決してお話上手ではない。仲の良いお友達と楽しくお話しするのとは全然ワケが違う。このおねーちゃんとの通話中はなんとも気まずい空気が流れて、ホントに居心地が悪い想いをするのだ。なので「注文はメールでしてください」とお願いしたら、以来電話は止んだのだけど、ある日、実に久し振りにそのおねーちゃんから電話があった。

代金の振込先がそれ以前は個人名の口座だったのだけど、屋号の口座に変更した矢先のこと。で、おねーちゃんは、初っ端、そのことに対する驚き?なのか感想?なのかよくわからん話を始める。どーでもいいじゃん、そんなこと。無事に振り込めたんだからさ。で、用件は一体ナンなのだろー?と思っていたら、話が急に変わり、「FISM(近日開催予定だったマジック世界大会)へ行くんですか?」と問われる。

それこそ、どーでもいいじゃん?

一応、訊かれたので「行かない」という事実だけ教えてあげたら、「残念ですね、いらっしゃると思ったのに」と。アタシにとって、何も残念なコトはないのだが。で、決して話が上手ではないおねーちゃんはここで沈黙。

「あの?ご用件は???」

堪らず、その思いをそのまま口に出す。すると、ご用件は「口座のこと」とのこと。

だからさ、何故アナタのその「驚き」をわざわざアタシに知らせてくるの?????仲の良いお友達が「アンタんトコ、会社にでもしたの?口座名義変わっとるで、で~ら、驚いたがねー!」と電話してくるなら別に構わないのだけど、彼女とは決してそんな間柄ではない。

その後、「今度いつブースを出すんですか?」トカ仰るので、「もうブースは出しません」と申し上げる。すると「残念ですね。これからお会いできる機会がなかなかないですね」と仰る。よーするに、なんだ、このアタシが恋しい(?)ばっかりに、ウチに電話をする口実を無理やり見つけてきたってコトなのか???ぅぅぅ。急速にキモチ悪くなってきた...。


ホントに、意味がワカラン...。


このヒトは、ナゼだか余程筆者とハナシがしたいらしい。そのワリにはちっとも話が弾まないのだ。コチラとしては大いに迷惑である。先方も先方で、気が合う訳でもない相手と話して一体ナニが楽しいのだろうか?

思うに、このヒトはアタシのことを大それたヒトと勘違いしているようなのだ。筆者なら大それたヒトにこそ、気安く電話ナゾしないのだが。

この電話のあった日、マイケル・ジャクソンの訃報が全世界を駆け巡っていた。テレビ番組は軒並みマイケルの死亡報道で埋め尽くされていた。その中で、黒人のオバサンが街頭インタビューを受けていて、「ずっとマイケルの彼女になりたいと思っていたわっ!」と仰っていた。

仮に筆者がマイケルのファンだったとしても、一緒に話をしたり写真を撮ったりしたいとは思わない。だって、先方とは絶対お友達にはなれない訳だし。ましてや、彼女になりたいナドとは絶対に思わないだろうよ。有名人だろうとなんだろうと、自分と気の合う素質のないヒトと同席するコトには興味がないのだ。

だから、電話のおねーちゃんや、マイケルの彼女になりたいオバチャン、4サマを追っかけるオバチャンたちの気持ちは、まったくもって、理解できない。 理解する必要もないのだが、とりあえず、おねーちゃんのプチストーカー行為は謹んでいただきたい、と、せつじつに願うのであった...