陸章 毛花売りの少女

ワケのワカラン言語で喋らないでくれ

ヘンな客から電話がかかってきた。どうしてこうも「自分だけにしかワカラン」言語で会話をしようとする客ばかりなのだろう…といつもいつも思うのだが。

まずは、電波状態の非常に悪い所なのか、周りが五月蝿い所なのか知らないが、「よく聞こえませ~ん」とがなり立てた挙句、電話が切れてしまう。再度かかってきたが「よく聞こえないので大きな声で話せ」と言う。こっちはばっちり聞こえているし、きちんと線の繋がった電話なんだから、悪いのアンタの方じゃん?こちらでは善処の仕様がないので「もっと電波状態のいい処からかけ直してください」と言うと、ココからしかかけられないという。なんじゃそりゃ?自分勝手も大概にしろ。

次に、先方が何を注文したいのかサッパリ要領を得ない。何処かで筆者が実演したのを見たらしいのだが、「アレが欲しい」という。アレじゃワカラン。実演では一つの商品だけでなく、イロイロ見せてるんだからさ。その旨を改めて話して聞かせ、で、どの商品の事を言っているのかわかるようにもっと詳しく聞かせてくれ、とお願いすると、「よくわかる人に代わってくれ」ときた。

あの…アタシが店主なんですけど?

て言うか、こちらに知識がなくてどの商品の話をしているのかわからないのではなくて、アンタの言っていることがワケがわからないので埒が明かないって話をしてるのに、そんな日本語もわかって頂けないんですか?

い、イカン、この程度のことでキレていては…。

相手は更にワケのワカランことを並べ立て続けたが、ようやく、何が欲しいのかまではわかった。さて、我が工房では十三色の中から選り取りみどり、お好きな色を選べるシステムになっているのだが、色にまでこだわりを求めるセミプロ級のパフォーマーならともかく、ど素人の中高年のお客さんには、これはむしろ不要なオプションであるらしい。「お任せする、どんな色でもいい」と言うから「そんなコトゆーたら三年以上売れ残っているドドメ色のヤツを送ったろか、コラ?」と思いつつ、実際には「在庫から適当に選びますよ?」と幾分表現を和らげて問うと、「綺麗な色にしてください」とのたまう。あ、ドドメ色はパスですか。てゆーかドドメ色以外は大体どの色も綺麗ですが。

で、次は商品の送り先だ。こちらが質問する順に答えりゃいいものを、「ウチは郵便局の近くなんですよ」と、訊いてもいないことから先に喋ろうとする。郵便局の近くだから郵便局から振り込みたいんだろうが、そんなことはコチラにとってはどうでもいいのである。なんだかんだとようやく住所と名前を聞き出した。

どっと疲れる。

会社勤めなんかしていると、こーゆーオジさんがいっぱいいて、しかもそーゆーのが上司だったりするんでしょ?タマランなぁ…アタシにゃ耐えられそうもない。