陸章 毛花売りの少女

ウッカリ君 北米編

珍しく、アメリカ人から問い合わせがあった。う~む、我が工房も遂に北米顧客ゲットか?北米でブースを出したことはなく、広告を打ったこともないため、北米人のお客さんはこれまでの所皆無。が、アジアのイベントで会った北米人や、北米と取引のあるホンコン人の知人などが噂をばら撒いたのか、このところぽちぽち問い合わせがある。

しかしまーなんだ。相変わらずアメリカ人という輩は尊大じゃのぉ。

一通目のメールは商品の価格についての問い合わせだった。米ドルで幾らか、とか訊いてくるんだけど、今のレートを調べて計算するくらい自分でやってよ。全く、世界がアメリカのみを中心に回っている人々だこと。でもまー親切に「本日のレート」を記載して、自分で計算してね、と書き添えて差し上げた。でもって「レクチャーDVDにはサイトにあるデモ映像の手順を演じるための説明がしてあるかどうか『はっきりした英語』で誰か教えてくれんだろうかね?」と、些かコチラをバカにしてんのかコラといった表現で書いてある。てゆーか、日本語のショッピングサイトで英語で応対してもらえるだけ有難いと思いなさい。てゆーか、そもそもレクチャーDVDとはデモの内容を解説するモノであろうよ。一体このアメリカ人は何が訊きたいのだ?

彼はデモで使われている楽曲についても問い合わせてきた。日本のアーティストの曲だったが、ワザワザAmazon.com(Amazon.co.jpではなく)の方でその楽曲の入っているアルバムを調べて、URLも教えてあげたのだが。

二通目のメールには、まずこんな記載が。

Thank you for your prompt e-mail....and in regular non broken English!(ha, ha).
(素早いご返答アリガトウ。それもブロークンでないマトモな英語で。ハハハ!)

何が「ha, ha」だよ。ったく。だから英語で応対してもらえるだけ有難いと思いなさいってば。一応、筆者の書いた英語にはご満足頂けたようだが、仮にコチラの英語がブロークンだろーと贅沢が言える立場ではなかろー。

続いて。

Also, what is the music she uses on the online demo?
(ところで、デモで使っている曲って何?)

即ち、この人、筆者がご丁寧に付けてあげたアマゾンのURLに全くお気付きでないご様子。

う~~~~~~~む。

北米人は一度に複数のことには集中出来ず、メールに二件以上の用件を書くと一件にしか反応出来ない人がヒジョーに多いということは経験から知ってはいたが。だから北米人相手には一メール一用件を心掛けていたのだけど、久し振りだったのでついウッカリしていた。イカンイカン。

さて、三通目のメールが来た。楽曲の記述についてはすっかり見落としていた、と書いてある。ヤッパリね。てゆーか、あんな短いメールで三~四行にわたる記述をどうやったら見落とせるのか、その方がかえってフシギだ。
三通目の三分後に四通目が届く。

The "set" means flowers, wand, and DVD correct?
(「セット」っていうのは、毛花とウォンドとDVDのことだよね?)

ぇとー、セットの内容が複雑なので、図説等がたっぷり載っているサイトのURLを貼り付けて、こっちを参照してね、って書いておいたのに。それを見て理解出来ていないのだとしたら、この人、よっぽどアホだ。英語の苦手そうな韓国人のお客さんだって、これ程物わかりが悪かったためしがない。英語が云々言う前に、まずアナタのウッカリぶりを治して頂きたいものだ。て言うか、絶対サイトの方、見てねーな…。

案の定、三十八分後に五通目のメールが届く。

Okay I found everything I need and you had answered it.
(おーけー。必要な情報は全て見つかったし、キミが既に答えていたって事にも気付いたよ)

あ、ようやくその事実に気付いてくれましたか。結局、筆者が返事もしないのに、一人合点、完全自己完結のメールが三通立て続けに届いたワケだ。一体何を慌てていたのだか…。

ところでこのウッカリ君、ウッカリには違いないが、メールの返事がやけに早い。アメリカ東部だとちょうど半日くらい時差があるから、向こうは真昼間のハズ。一体何処でメールチェックしているのだろう?会社?そそっかしいから学生さんかもしれない。

そんなことはともかく、ウッカリ君に負けず劣らず返信の早い我が工房。なにせ注文の絶対数が少ないくてヒマですから。その上店主は宵っ張りだから、地球の裏側からの問い合わせにもタイムラグなしで即答できてしまう。
しかし、そんな状況はつゆ知らず、(陰で愚痴りつつも)きめ細かく明瞭な対応、素早い反応、その上ブロークンでないイングリッシュにウッカリ君は大感激してくださった模様。それもこれも、かつて日本の会社に問い合わせをした際、ブロークンな上に曖昧なイングリッシュで返答されて辟易したことがあったそうな。

何処の会社か知らぬが日本の会社に限って曖昧な返答というのは大いに有り得る。ご愁傷様だったね。でも、たとえブロークンでも、やはり返事をくれるだけ有難いのだよ。ガイジンの知人が言っていたけど、日本のマジックショップで買い物をしたくてメールを送っても、大抵シカトされるんだそうな。