伍章 外国でも七転八倒

軍隊でマジック

釜山のマジックフェスティバルで、久しぶりに知り合いに会った。彼の髪が随分短くなっていたので、そう言ったら、なんと兵役の最中だという。だから髪を刈ったのか。それは大変だね、軍隊にいる間はマジックも出来ないし、と言うと、およよよ、と泣き崩れる振りをする。それで半ば同情しかけたのだが…。

それにしても一体どうやって軍隊を抜け出してココへやって来たのかと訊ねると、イベント主催者から軍隊へ招待状を送ってもらったのだという。それはいい息抜きになったね!というと、そうなのよ、といった素振り。なお、ココまでの会話は筆者のいい加減な韓国語と彼の中途半端な英語によってなされているため、実際に正確に意味が伝わっているのかは怪しいものなのであった。

ところへ、日本語通訳さんから、ふとした弾みに別の有名なマジシャンも近々兵役につくという話を訊いた。しかし彼の場合は軍隊でもマジックをやっていればいいのだとか。まー彼は韓国一有名なマジシャンだからソレもアリかと思ったのだが、イマイチ有名とは言い難い件の知人はどうなのだろう?さっきの落胆振りからすると、そういう話ではなさそうだったのだが、改めて通訳さんを介して話を訊くと、ヤハリ彼もマジックだけやっていればいいのだという。でも他の仕事もあるでしょう?と重ねて訊いたのだが、やはりマジックだけでいいのだという。

いいのか?韓国の軍隊?そんな甘っちょろい任務の兵隊さんがいて

軍隊でマジックって、イマイチ想像がつかないのだが、要するに普段通り練習していればいいのか?他の芸能人、例えば歌手や俳優なども同様に軍隊で芸能活動をするのだろうか?

相変わらずナンダコリアな韓国なのである。

更に更に。

別の知り合いも兵役の最中だという話を訊いた。このところ知り合いのマジシャンがどんどん兵役に付いているようだ。十代後半くらいからマジックを始めてのめりこんでいき、それゆえ大学をサボったりナゾしているうちに兵役もこなしそびれていたって処だろうか?で、その知人の仕事はというと、コンピューターに明るい所を買われ、そういう類のデスクワークのみなのだとか。しかも職場が自宅から近いので、兵舎ではなく自宅から通っているのだとか。

しかも。

兵役の最中なのに、普段通りにマジックショーをやったりしているんだそうな。だからボーズアタマにもせずに、ファンキーな髪型のままなのだとか。そんなんでも「兵役」なのか…。いっそのこと兵役免除にしてあげなよ、と思うのは筆者だけだろうか。