四章 マジック界の困った人々(男子編)

話の噛み合わない男たち

我が国におけるとあるイベントの後のこと。ショボい打ち上げパーティーでひとしきり騒ぎ、それでもなお、イベントの興奮冷めやらぬ同志が集って、飲み屋での三次会となった。筆者を含め、六名。筆者以外は全て男性。定年後、及び定年間際のオジさんも含む。みんな自分の得意分野でいろいろ頑張っている方々ばかり。それぞれ、壁にぶち当たることもあったり、こういう風に事態を改善していきたい、という理想があったり、そんな話を相手にぶつけたくてしょうがないらしい。何人かとは以前に一対一で会って、それとなく触りを聞かされていた筆者は、彼らの言いたいことは良くわかっていたし、それでもなお、おとなしく彼らの話を聴いていたのだが…ぇと…当の彼らは、お互い、自分が話したい気持ちが強過ぎて、他人の話に全く耳を傾けていないのだ。相手の話を聴いて、それに応える意見を述べるのではなく、相手が話し終わるのを待って、全然違う話題(各自が話したい話題)を始めてしまうのである。よくよく聴くと、ちっとも議論が噛み合っていない。そんな状況ではとても自分のお話をする気分にもなれなかったので、筆者はもっぱら聞き役に専念した。

帰り道、確信犯的に終電を逃した知人の男性を、車で来ていた筆者が自宅まで送り届けることになった。彼は筆者と同様、飲み屋では比較的おとなしく聞き役に徹していた。道すがら、あの「熱い語り合い」の話となる。
「熱い議論だったねー」「でも何かビミョーに話が噛み合ってませんでしたよね」と筆者が言うと、「そーそーそー」と彼も頷く。「でもいいんだよ、アレで。」と彼は至ってお気楽である。そーか。アレでいいんだ。

筆者の親しい知人は、男女とも、割と一生懸命ヒトの話も聴いてくれる人が多いので、あそこまで話が噛み合わない集団の中にいたのは初めてのこと。かなり違和感があったのだが、楽しければそれでいいのだろうか?幾ら想いが熱くても、議論が出来ないならその熱い想いは永遠に実現しないと思うんだけど。