四章 マジック界の困った人々(男子編)

ヘンにへりくだった人

ある時、マジックの関係者に連れて行ってもらったマジック関連のお店で、ヘンにへりくだった人に会った。お互い名前は聞いた事があったものの、初対面。こちらは相手の人柄を推し量る材料は殆ど持っていなかったし、向こうも同様のハズなのに、会った途端、猛烈なお世辞の嵐。

「かめさんといえばスゴい人ですよ」

「もー、お噂はかねがね」

アタシは一体どんなスゴい人なんだろう?初対面なのに何がわかるというのだろう?何か噂を聞いていたとしても、それは所詮噂。本人が「スゴい」ものを目の当たりにして感想を述べているワケではない。しょっぱなからこの人物に対してものスゴー空々しさを感じてしまった。て言うか、ホントにスゴいと思っているワケではないことは明白で、むしろバカにされているような気がしていたのだが。

別れ際も別れ際で、妙な事を言ってきた。

「軽々しく口をきいてしまってどーもスミマセン」

しかし言葉とは裏腹の実に軽々しい口調。本心から言っているとしたら恥の上塗りであるが、とても本気で言っているとは思えなかった。ホントにそう思っているのだったら、そもそも本当に軽々しく口をきいたり、後からわざわざこんな断りを入れたりしないだろうに。きっとこの方は、このような外面を取り繕うだけの世界(実際裏が透けて見えまくり、全く取り繕えていないのだが)にだけ生きているのだろう。「エラい人には取り敢えず口だけでも敬っているふりをする」と。「ふり」にすら見えなくて非常に薄っぺらなのが見栄見栄だったんだけど。

筆者自身、自分のことをスゴい人だともエラい人だとも思っていないし、仮に自分がエラい人だったとしても、このような卑屈な態度を取られる事はご遠慮願いたい。なんだか、日本の文化なのかねー、「エラい人」が威張るのは。その威張りに倣うようにおべっかを使う卑屈な人が群がるのは。欧米だと、筆者よりずっと「エラ」かったり「スゴ」かったりする人でも、実に気さくで、「威張りのオーラ」なんか発していない人の方が多いもの。