四章 マジック界の困った人々(男子編)

安請け合いする有言不実行の人

もう一つ、ガイジンマジシャンの話である。彼が自分のエージェントに筆者を紹介してくれると言うので、言われた通り、プロモーションビデオを一本用意して彼を訪ねた。ところが紹介予定のエージェントが複数あったので、ビデオをコピーする必要があり、それを彼がやってくれる事になった。親切に写真入りカバーまで作ってくれたのはいいのだが、いかんせん、北米人の常で仕事が遅い。クリスマス直前になって「出来上がった」とメールが来た。それから送ったとしてもクリスマスシーズンの仕事を得るのは無理だったが、少しでも早い方がいいので、郵送料を立て替えて直接エージェントに送るように頼んだ。ところが、年明けに電話をしたら、ビデオはまだ彼の手元にあると言うのだ?でもって、「来週送るから!忙しくて送っているヒマがなかった」とのたまう。

出演の機会があるとしたら主にクリスマスだし、しかも筆者は一月には帰国してしまうと言っておいたのに、今から送って何の役に立たせようというのだろう?親切でやってくれたので、余り文句も言えないが、何のためにそれをやったのか、根本からわかっていないところがコワイ...。

どんなに忙しくても、封筒に宛先を書いてビデオを入れ、投函するくらいの時間が全くなかったとは思えない。筆者は、時間とは作るものだと思っている。彼には時間がなかったのではなくて、その気がなかったのだ。「時間がない」というのは「その気がない」事を隠すための言い訳でしかない。自分だったらたとえ超多忙だったとしても、一旦引き受けたことなら、なんとか時間を作ってそれくらいの事はしていると思う。

まーそんなこんなで、何でも自分を基準に考えちゃイカンという事を、しっかり学んだのであった。

また別の男性マジシャンの話だが、彼は本業が大工で、マジックのコンテストに出演するつもりの知人のために木工品の道具を作ってあげる約束をしたそうだ。ところが道具が出来上がったのは本番二日前。その知人は練習する事も出来ず、出場を諦めた。これも前の例と同じで、何のためにそれをやったのか、根本からわかっていないところがコワイ...。二日前に道具を揃えて、一体何をしろというのだ?

ある人が上手い事を言っていたのだが、「欧米人は自分自身の幸せを一番大切にする人々」だとか。とにかく、他人の事に関しちゃ注意力散漫過ぎる人が多いのだ。この言葉を聞いた時、それまでに起こった数々の事件を思い出し、「あ、あの事ね」と、妙に納得してしまった。