壱章 どちらかというとフツーの人です。
気配がない
ステージを降りると人々に認知されない原因として、筆者の「気配が薄い」事も関係しているのかもしれない。知人と話していて、何の気なしにこんな言葉がふっと自分の口から漏れた。
「アタシ、気配を消すのが得意なんだわね」
実際にそれまで、そんな事を敢えて実感していたワケではなく、半ば冗談のつもりだった。しかし、そう言えば、と話し相手の方も、すぐ側にいるのに筆者の気配を感じなかった事がある、と言うではないか!
街中で道を歩いている時など、やけに鈍感なオバさんが多くてイライラする事が多い。自分ならこの辺まで人が近付いたら気配を感じて、邪魔にならないように避けるなりなんなりすると思うのだが、彼女らは筆者の姿がかなり前方視野に入ってからでないと全く気付かず、気付いたら気付いたで、突然人が現れたとでも言うように大袈裟に驚いて見せるのである。女性は後方のパーソナルスペースと視野が狭いと言う話は聞いた事がないような気がしなくもないが。
普段の姿形が麗しくないだとか、「特別な人」としてのオーラがないだとか、人々に発見されない原因はイロイロあるだろうが、ひょっとしたら「気配がない」のが一番の原因では???そう思った根拠は、前述の話をしていた時はステージ出演の直後で、上着を羽織っていたものの、衣装もメイクもそのままで、人通りの多い場所を移動している最中だった事だ。明らかに奇妙な人がいるというのに、特にそれを気にとめる人は皆無だったのだ!!!街中で人々が筆者の存在を感じないのも、彼らが鈍感なのではなく、本当は筆者の気配が常人より薄い事が原因なのかもしれない。