参章 マジック界の困った人々(女子編)

中国人と恐怖の三時間ショッピング

ある年の秋、シゴトで北海道に行った。そこで大変恐ろしい経験をした。中国人女性との電子機器ショッピングである。滅多に出来る経験ではないが、二度としたいとは思わない。

ほんの予備知識として書き記しておくが、彼女は一応、マジック界に於いてちょっとばかし有名な、「世界を股にかけて活躍する」パフォーマーである。

その日の午前中、我々マジシャン一団は札幌から洞爺湖の温泉ホテルに向かう予定だった。甚だ忙しいスケジュールである。そんな中、件の中国人女性が日本製の小さいビデオカメラを買うために、別行動で札幌ヨドバシカメラに行く事になっていた。我々一団の中では唯一筆者が英語で滞りなく意思疎通がはかれたため「悪いけど一緒に行ってやってくれませんか」と頼まれた。まー彼女には個人的に何かとお世話になっていたし、高々三十分くらいのお仕事だろう、と踏んで、筆者は何の躊躇もなく引き受けた。

が。


筆者は彼女の性格――中国人女性のけだし最も激しい部分を精一杯集めたような性格を、十分熟知していたハズだったのだ。ともすれば、それをすっかり失念していたに違いない。その事がそもそもの間違いだった。

はてさて、コーディネーターの方と共にヨドバシカメラに向かった我々。まずはどのような機能が欲しいのか軽く希望を聞きながら当たりをつけていく。できるだけ小さい物がいいと言うので、まずは最新のHDD記録式のカメラの前へ。彼女にとって重要なのは、バッテリーの持ち時間。しかし世界最小HDDカメラのそれは、たったの三十分。記録可能時間が一時間なのに、だ。ちょっと機械に詳しい人なら、HDDは電力消費量が大きく、そのための長時間バッテリーを製造する技術がまだ追いついていないため、とその理由を咄嗟に理解するだろう。新技術の出始めにはよくある話だ。が、悲しいかな、多くのオバさんにありがちなように、彼女は余り機械モノに明るい頭は持っていなかったらしい。「一時間撮影出来るのに、何故バッテリーが三十分しか持たないのだ」と説明を求める。技術が追いついていない、などという論理的・実際的な話をしたトコロで聞く耳持ちゃしないのだ。彼女にとっては自分の都合が最優先なのである。ここで二十分くらいすったもんだした挙句、ミニDVに記録する従来のタイプの物を見に回った。テープを使う機種としてはSONY製品で最も小さいものがあったが、これはミニDVよりも更に小さいミニミニDV(?)を使うのだった。既に彼女が持っている物との互換性がないから何かと不便であろう。ここで十分程すったもんだした挙句、洞爺湖へ向かうバスに乗るために戻った方がいいという話になった。すぐには決められないからカタログをもらって行って、明日の昼にまたやって来る、と言うのだが、カタログごときで決められそうもなかったし、コーディネーターの方に話を聞くと、明日は明日で更に時間に余裕がなさそうだ。この方はバスではなく乗用車で洞爺湖へ向かうという事なので、我々も彼らと一緒にその車で後から行く事にしてはどうか、と提案した。

この提案もそもそもの間違いであった。

はてさて、コーディネーター氏が諸所の用事を済ませてカメラ屋に戻ってくる間、すったもんだは更に更に更に、果てしなく続く。彼らが行ってしまった後、件の中国人はカメラ売り場を離れ、他の売り場をフラフラしだした。

「ちっちゃなパソコンがあったわね。アレもいいわね。」

オイオイ、カメラ買わねーのか?

訊けば、急いで決めるとロクな事はないから、無理にカメラを買う必要はないのだと言う。そなの?だったらアンタの事なんかほっておいて先に洞爺湖へ向かえば良かった...。

なんだかんだで好き勝手に十分程ほっつき歩いた後、彼女は再びカメラ売り場へ戻る。まだHDDに未練がありそうだったが、動画・静止画とも、従来のテープ記録式の方が画質が良いようなので、ミニDV媒体のカメラを買う事にした。動画はともかく、画素数にこだわる程の名作静止画像を彼女が撮るとも思えないのだが。...まぁいい。そんなこんなで、予備のメモリ、バッテリー、カメラケース、三本パックのミニDVを買う事が決定した。

彼女は外国人なので、免税扱いで買う事が出来る。そのため、わざわざパスポートを取りにホテルに戻る、なんて一手間もかけていた。また、彼女のことだからどうせ更に値切ってくるだろうと踏んで、「もちっと負からないですかね」と店員に訊いて先手を打っておいた。すると、クーポンを使った事にして三千円の割引が可能、及び消耗品に対しては消費税分を割引いてくれるという事だった。ココまで話が進んだトコロで、彼女、予備のバッテリーを買うのは止める、と言い出す。さっきあれ程持ち時間を気にしていたというのに。もともと付いているバッテリーの持ち時間は四十五分、テープは通常六十分。どうしたって予備があった方がいいに決まっている。また、その商品は最新機種なので、たとえ後からそれに合うバッテリーを買いたいと思っても日本以外で手に入るかどうかわからない。と言う点を店員と筆者の共同作業でなんとか言い聞かせ、なんだかんだで五分以上はロスしてしまった。

次はマニュアルだ。英語か中国語のマニュアルが必要だったが、店に在庫はないとの事。また、彼女の選んだ商品では外国語マニュアルは交換という形ではなく、別売されるという事だった。英語版が六百円、中国語版が九百円。大した価格ではないが「アタシは日本語マニュアルなどいらないのだから、どうしてタダで交換してくれないのだ、なんだったらその分価格を値引きしろ」と言い出す。この機種では別売という形しか取っていないのだ、と幾ら説明しても、ホレ、彼女は自分の都合が最優先の人だからさ。それだったら、と店員が持ち出してきたのは、もともと海外仕様に作られたパッケージ。これには英語マニュアルがセットされているが、日本向けの物が九万円程度なのに対し、こちらは十二万円台。あの...年全然解決策になっていないんですけど...?てか、オバさん、アンタたんまり稼いでんだろ?九百円ぽっち値切るなよ...。

が、ここでまた問題が。海外仕様製品の外箱に「PAL」の表示があった。これは主にヨーロッパで採用されているビデオ方式だ。一方、日本やアメリカ等では「NTSC」と呼ばれる方式が採られている。両方式ではテレビモニターの走査線の数と一秒間のフィールド数、及びカラー方式が異なり、PAL方式のソースをNTSC方式の機器で再生すると、モノクロ画面になったりコマ飛びしたりしてまともに見られない。逆もしかり。彼女は「世界を股にかけて活躍する」パフォーマーであり、住まいはアメリカ・カナダの「豪邸」、ヨーロッパの「ナイスなアパートメント」にもしょっちゅう長期滞在する。片方だけ対応の機械なんか買うワケには行かないわ!!と怒ったようにまくし立てる。だけど両方式に対応するカメラなんかあるんかいな?彼女曰く、十年程前に日本で買ったビデオカメラはそうだった、と言うのである。マヂ?その上、DVDは方式関係なく再生出来るわ!!!と、全然関係ない事まで持ち出して更に場を混乱させるのだ。店員さんてば、可哀相に、「リージョンコードの事ですか???」と困惑顔。

はてさて、彼女曰く「両方式対応」のビデオカメラ、よくよく聞いてみると電圧アダプターの事と勘違いしていたらしい。日本だと100V、ヨーロッパだと220Vというヤツである。勿論ワールドワイドなメーカーなら大抵の電子機器は電圧関係は難なくクリアしているのだよ。彼女、出力方式の事など何一つ理解していなかったのだ。

ぅわぁぁぁ!機械音痴のガイジンのオバさんとの買い物がこれ程までに恐ろしく非常識チックだとわぁぁぁ!

顔や態度にこそ出さなかったが、筆者も店員もこの時点で半分キレかかっていた。しかし、彼女、ここで本当に電圧がきちんとワールドワイド対応なのか、確かめなきゃ気が済まない。製品の箱をがさがさ開け、アダプター部分を取り出して対応電圧帯を確認するまで次の作業に進もうとはしないのだった。

後でまた一悶着あるといけないので、念のため、出力方式の事についてもう一度説明をしておく。NTSC用のカメラを買った場合、ヨーロッパではテレビに繋いでも正常に出力されないから、カメラ付属の小さいモニターで見るしかないのだよ、と。実は、これは「電源アダプター」の事が発覚する前に散々説明したのだが、彼女は 聞く耳持っちゃいなかった。なんだかんだで結局国内仕様の安い方を買う事になった。

この頃、コーディネーター氏がようやく戻ってきた。が。まだ買い物が終わっていないのをみとめるや、顔に苛立ちの色が...。

さて、ここでマニュアルについての確認を。彼女は中国語マニュアルが欲しいのだが、店には在庫がない。取り寄せに数日かかるが、届く頃には彼女はもう日本を離れてしまっているので、誰かにここに取りに来てもらい、彼女の「豪邸」へ発送するようにする、と。カナダとアメリカとどちらの「豪邸」に送りましょうか、というトコロまで確認して、さぁ、ようやく会計だ。

ところが、ここで伝票を書き始めたのが先程値引き交渉したのとは違う店員だった。矢鱈と時間をかけてこまごまと品番を書き綴っているが、ハード製品と消耗品を分けて書いている様子がない。ハテ、と思っている処にちょうど良く、中国人が「関税をかけられた場合出来るだけ安く上げたいからレシートを製品ごとに分けろ」と言い出した。カメラ、カメラケース、消耗品の三つに分けるのだ。まーそれは当然の要求だろう。

と、ここへ初めに対応した若い女性店員がやって来て、ややこしい事を言い出した。免税扱いにするとクーポンが使えない事になっているので、普通に消費税を払って買う事にし、クーポン割引を受けた上で、そこで発生したポイントで消耗品を買った方が安くなる、と。なかなか複雑なお話だが、彼女にもわかるように、なるべく噛み砕いてゆっくり説明してみた。だが彼女は何かしら疑わしげな様子。じゃあ、その違いがどれくらいのものなのか数字を見せてやって頂戴、とコーディネーター氏がお願いすると、なんと五万円程の開きがある。え!幾らなんでも、そこまでは違わないでしょ?事実、これは動転していた店員のミスだったのだが、中国女の疑いはココで一気に倍増。自分で電卓を取り出して数字をはじき出し、これはヘンだと騒ぎ出した。すみません、間違えましたと平謝りの女性店員、慌てて大きく出し過ぎた数字を訂正する。すると中国女、こちらが間違っているならあちらも間違っている可能性がある、両方ともきちんと計算しなおせ、と言う。コーディネーター氏はひそかにイライラ。時間的余裕を訊いてみると、もうそろそろ出発した方がいいという。

そんなこんなで差額が一万円程ある事はわかったので、クーポンとポイントを使って買い物をする事は決まった。まずはハードの計算を、続いてポイント分を差し引いた消耗品の会計を。彼女はこれを、全て現金で払うのだ。いちいち札と小銭を数え、おつりもいちいち確かめて、まーほんとにこまごまこまごまと時間のロスが多い事。

そんなこんなで会計が半分程済んだ処で、今度はカメラケースを買うのを止めようかな、と言い出す。実は無料のソフトケースが一つもらえる事になっていたのだ。またまた会計がすったもんだ。

おおよそ支払いが済んだ処で、今度はたったの三千円の割引?と言い出し、たまたま店員が妙案を持ち出したりしたものだから、またも会計がすったもんだ。手持ちのカメラを下取りに出すと、五千円割引してもらえる事になっているのだが、「下取り用」と札の貼られたカメラが何故か店頭にあり、それを利用して割引出来る、と。そうすると、ホラ、ポイントの計算からやり直しだっ!あーもー、何でもいいから早くしてくれっっ!!!

その上、彼女はまたもやすったもんだな事を言い出す。「高いカメラを買うのだから、やはりそれに見合った専用のハードケースの方がいいんじゃないか」と先程キャンセルした商品をまた買う事にしようか、と言うのだ。

.........。

その通りですよ。高い買い物ですものね。付属品も安く済ませちゃいけないわ!その通りよ!エエ、もう、ホントに!!!

さあ、なんだかんだでようやく支払いが済んだ。機械音痴の彼女は、メモリのセット、日付のセット、ハテはミニDVのセットまで、やってもらえるものは全部店員に任せるつもりのようだ。筆者なんぞは何もかも自分でやった方が気楽な性分なので、こういうオバさんの思考パターンというものはまるで理解出来ない。て言うか、この場に於いて、こういう行動の一つ一つが我々の フラストレーションをいちいち増大 させている事に彼女は気付いているのだろうか?イヤ、間違いなく気付いていまい。まーとにかく物事を早く終わらせようと、筆者もパッケージの外箱を外したり、カメラケースのストラップを装着したり、出来る事を探し出してなるべく時間の節約をはかった。

が。

ここで我々、重大な事に気付く。て言うか、もっと早く気付けよ、てなもんだが、なんと、カメラの中の表示が日本語しかない!?そりゃ外国語マニュアルも置いてないハズだわさ...。

機種を変えるか、海外仕様の製品に変えるか、はたまた何も買わずに帰るか!?
どうする!オバさん!選択肢は三つだぞ!

可哀相な女性店員、これまでの事はみんな私のせいと言わんばかりに申し訳なさそうな顔。中国語のマニュアルもカメラ内表示もあるという別の製品をお薦めする。その様子が余りにも哀れだったのか、件の中国人は「彼女に悪いからこれを買う事にするわ」と、それまでのこだわりが一体なんだったのか、と思わせるようなことのたまう。イヤ、オバさん、幾ら彼女が可哀相でも買いたくもない物を買う必要はないってば、という事を伝えると、

「これだけ長く時間をかけたんだから、何か買っていかなきゃ気が済まないわっ!!!」

って言うか、アンタ、買い物が本格的に始まる前に「よく理解しないうちに焦ってロクでもない物を買いたくない」て言ってたじゃん...。が、素早い決断は有り難い。店員も、メモリ、バッテリーなどをぱぱぱっと揃えて持って来た。さぁ、返金して次の会計へ、という処で。

「ホントにこれは日本語表示しかないの????きちんと調べて。」

オバさん、気持ちはわかるけど...。すっぱり決める割には後ろ髪引かれやすいタイプなのね...。

更に三十分。

まずは返金作業。差額を返して、なんてやっていると、疑い深い中国人が電卓を叩いて確かめろ、と言いかねないと店員も思ったのであろう。まずは一つ一つ逆にたどって全額返金する事にしたようだ。彼女は彼女で案の定、帰って来たお金をいちいち丁寧に数え上げて確かめる。

幸い、今度の製品は日本語マニュアルと中国語マニュアルを交換という形に出来る物だった。したたかな彼女は英語版ももらえないかしら、とのたまう。自分ではわからない事があったら他の人に聞きたいからだそうだけど。

で、時間がないのでセットアップは自分でやるわ、と一度は言ったものの、彼女は筋金入りの機械音痴なのか、やはり店員にお願いすると言う。

ぅぅぅ。二転三転が好きなのね。

筆者はまたもや外箱を破ったりストラップを取り付けたり。てかオバさん、自分でもなんかやれよ。彼女のやる事と言ったら、横でひそかにイライラしているコーディネーター氏に「待たせてホントゴメンね」と言って肩をさするくらい。ぇと、ワシの事は?

はてさて、また支払いの段になって、彼女は先程受け取った細かい小銭の類をいちいち数え上げ、なるべく細かいのから出していこうとする。筆者だったら大きいのから出して少しでも時間を節約するのだがなぁ...。

そしてあろうことか、店員がレジ打ちしている間に、彼女はこんな事をぬかした。

「こんなにイロイロ複雑でアタシは全部理解していないんだけど、ひょっとしたら日本語のわかるアンタも余り理解していないんじゃないの」

ぶふぁ~~~~~、ひつれいなっ!!!!!!

アタシャこんな所に起こった事を「逐一全て」書きなぐれるくらい、「逐一全て」を理解しているし、それを六歳の子供にもわかるような英語で、誠心誠意アナタ様にご説明して差し上げたつもりなんですけどっ!!!!!自分が聞く耳持たないのを棚に上げてよくもそんな事が言えるものじゃのぉ...。中国女って恐ろしひ...。

そんな彼女も少しは悪いと思ったのか、タダでもらえるカメラバッグをもう一つ手に入れて、アンタにやる、と言い出した。

タダでもらえるカメラバッグ...。

使い道もないし、別にいらないからいいよ、と言うのに、「なんで?とっても便利よ♪」と言って聞かない。イヤ、アタシャ必要ないものはもらいたくないのよ...。しかし、物事を早く収拾するには取り敢えずもらってしまうのが一番だ。店員に「すみません、もう一つ欲しいんですって」と申し出て、筆者はそれを受け取った。とほほ。ネットオークションで売ろ。

買い物が一段落すると「一つの買い物にこんなに時間がかかったのは初めてよ」とため息混じりに彼女が呟いた。オバさんよ、アナタの一つ一つの言動がその原因を形成していた事をまさかご存知ない???

筆者はこの直前の三週間弱、ずっとドイツにいたのだが、はっきり言って、この三時間で ドイツで話した全体量よりも多くの英語 を話したような気がする。や~、君がいなかったらもっと時間がかかっていたかも、と他の皆さんが一様にねぎらってくれたけれど、正確に話が伝わらないなら伝わらないで、適当に丸め込んでもっと事は簡単に済んでいたかもしれない。マジで余計な親切心出さなきゃ良かったかも。

はてさて、洞爺湖に着いたのは結局午後六時過ぎ、翌朝は九時半出発。往復五時間程かけて、殆んど泊まりに行っただけである。筆者はそんなに観光好きではないし、中国人の彼女にはこれまでイロイロお世話になっていたし、「楽しい?ネタ」も増えたから、まーいいのよ。ホントにまーいいのよ...。

が、洞爺湖へ行く道中、「みんながアタシの事大好きなの」という彼女の自慢話を聞かされ続けたり(ドイツで彼女の事を好きでない人々から彼女の良くない評判を聞いてしまったアタシはどうしたら良いのでしょう?)、体よく彼女の通訳としてアゴで使われ(アナタに雇われたワケではなく善意でやっているのですから、通訳をお願いする時はpleaseくらいつけましょうね)、はたまた図に乗った彼女に部屋に荷物まで取りに行かされそうになったアタシって一体...。あぁ、疲れたべ...。アタシャ北海道まで何しに行ったのだろう...。

それでも少しは我々に悪いと思ったのか、彼女は買い物の直後、店の出口にあったマクドナルドでハンバーガーセットを買ってくれた。午後三時過ぎである。結果、午後七時、ホテルで出た豪華な和食膳は全部腹におさまらなかったり...。

イヤハヤ、彼女にはこれまでホントにイロイロお世話になった事はなったし、良い面もいっぱい知っているし、少しは大人になった筆者はこんな事くらいで彼女を嫌いになったりナゾしないのだが、それにしても、彼女のこれまでの成功の一端を担っていたのは、これら周りを余り省みないでいられる神経の太さと押しの強さ、これら二点にあるのではないだろうか、と思うのは筆者だけではあるまい...。

ところで、後日、ドイツにある彼女の「ナイスなアパートメント」を訪ねる事があった。彼女は北海道で買ったカメラを取り出して「あのカメラよ~。実はあんまり使ってないの」とおっしゃるではないか!!!あんなに苦労して買ったのに...。でもって、更に。

「このカメラを買う時、背の小さい男が助けてくれたわよね」

えっと。確かに背の低い男性もいましたが、付きっ切りでお世話して差し上げたのは、むしろこのアタシです――。