弐章 マジックよりフシギ過ぎる我が生活

インド人もイロイロ

さて、来るイベントの前日、まるで用意が整っていない所へ様々な対応に追われまくる社員の皆さん。更にはトモダチの世話を焼きまくってなんだかんだと重たいメールを送ってくるインド人留学生に引っ掻き回されてもーたいへん!!!!効率が悪い仕事振りのトコロへ、更に余計な問題が積み重なっていき、「本来の仕事」に全く手が付けられない状態になっていた。

件の留学生は「インドから来る参加者のビザ発給のためにインドの日本大使館に電話しろ」と、なぜか招待者でもないこっちの会社に朝から二十通以上も同じ内容のメールを送り続けていた。この会社は主催者から請け負って外回りの仕事を引き受けただけなので、これは全く見当違いの問い合わせなのだ。ソレはウチの仕事ではありませんから、と筆者が社員の署名で返事を書いた後も、ソレまで矢鱈と居丈高だったのが幾らか低姿勢になって「お願いだから、未来ある若者のためにお慈悲を!」と泣き落としにかかった。だから、ウチの仕事じゃないっつの。結局ビザは間に合わず、若者たちは来日を諦めざるを得なかったようだ。ウチらのせいではないが、なんだか切ない。

さて、ヒジョーに効率の悪い仕事をしまくっている社員の一人が、「今日は何時まで大丈夫?」と不吉なことを訊いて来る。これは…前日と同じパターンじゃありませんか!実はかようにして、前日の帰りは12時近くとなっていた。仕事を言いつけるならもっと早く言っておくれよ。日中結構ヒマだったんだから。しかし。鳴り続ける電話に追われ、彼には「仕事を頼む」余裕さえなかったのは筆者の目にすら明白だった。

夜が更けゆく中、そんなテンパリ社員の尻拭いをしている最中、全く予約もなしにイベント参加者用のホテルの一つに現れたインド人三人。予約もしていないのにどうしてソコに現れたのかは全く謎である。ナイス・トライと言いたいトコロだが、残念ながらそのホテルに空きはなかったため、タダでさえ自分のことで手一杯の効率ワルシ君が振り回されることになる。その彼に筆者も振り回されることになる。

「もうすぐガイジンから電話がかかってくるかもしれないから、出てくれる?」

――なんだか便利に使われてしまっている筆者なのであった。て言うか、イマイチ英語に自身のない社員に国際的なイベントの仕切りチームをさせる会社の方もどうかと思う。

ところで、前日にも予約ナシでホテルに現れたインド人がいた。これがカナリふてぶてしい輩で、イベントの公式ホテルにいきなりやって来て、自分は招待者だから予約が入っているハズだ!ココのホテルに泊まるのだ!と言い張るのだ。生憎そのホテルは既に満室。ホテルから連絡を受けたこのチームの社員が方々に電話しまくってようやく他のホテルを押さえたのだが、インド人はやはりそのゴージャスな公式ホテルに泊まると言って聞かない。…とゆーやり取りを、社員に代わって筆者が電話口でさせられたのである。典型的な自分の主張ゴリ押し人種であり、コリャどうしても引かんだろうな、と思っていたら、タマタマそのホテルに居合わせたイベント事務局のエラい先生が間に入ってごり押しに加担し、ホテルが隠し持っていたヒミツの部屋をゲットしたそうな。

さて、そんな前例があったものだから、「またか」と思って恐る恐る電話に出ると、意外と穏やかな様子の相手。とにかく三人で一部屋でもいいから泊まる所が欲しいという。至る所満室の場合でも、良いホテルのものすごく高~い部屋なら空いている場合もあるので、そういう部屋か、安い部屋かどちらがいい?と訊ねると、安い方がいいという。効率ワルシ君がなんとか抑えたのは、タクシーで二十分程の所にあるビジネスホテル。値段と交通手段について教えると、相手は素直に受け入れた。でもって「迷惑かけてごめんね」とコチラに謝った上に、最後に筆者の名前を聞いてきた。臨時雇いの筆者の名前を言ってもどうかと思ったが、取り敢えず教えると、その名前の後に「有難う」と付けて御礼を言ってくれたのだった。実際の所、通訳しただけでアタシャ彼らのためには何もしてないのにな…。

インド人もイロイロだ。

そんなこんなで、その晩は遅いながらもちょっとだけ気分良く帰ることが出来たのである。