かめ工房 モノクロ写真館

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今どき、モノクロ写真

高校生の時からモノクロ写真を始めた。写真部といえばモノクロ。予算的理由による必然。モノクロがやりたくて始めた訳ではなかったけれど、はまった。美しく現れた階調は、時にカラーよりも多くを語ることがある。

暗室でしか作り出せない偶然もあった。ネガを重ねたときにしか出来ない表現。平凡な猫と桜の写真が、偶然の思いつきで不思議な幻想に変わった。そして、光の当たったところが黒くなる、という、非常に単純で分かりやすい原理。それが分かれば様々な工夫を思いつくことが出来た。切り絵風のアートの栞。野の草の影で作ったフレーム。ガラスなど、光を透すものを印画紙の上に置く。ある時、定着液に浸す前に誤って印画紙に光を当ててしまい、それが白黒反転画像となった。かなり後に、これがソラリゼーションという一技法であることを知る。

こういった試行錯誤の繰り返しで生まれた偶然と傑作が、今日ではパソコンの操作でいとも簡単に再現できてしまう。淋しい気もするが、アナログ的手法に時間も場所も取りづらい今となっては、久しく疎遠だった昔の楽しみに、改めて、かつ気楽に向き合える機会となった。あるいはこれが帰り道か、はたまた新しい入り口となるかもしれない。またいつか暗室に帰りたい。