カナダ

第4節 バンクーバー地域情報

カナダの交通機関

バンクーバーに限らず、カナダに限らず、欧米の公共交通機関は、乗り込んだ時に料金を払う場合はお釣が出ない事が多い。小銭をきっちり用意しておかなければならないのだが、1.9ポンド、1.75ドルなんて小銭がジャラジャラ必要な価格の時は鬱陶しくってしょうがない。バスに乗る前に小銭が足りない事に気付いたら、近所の小売店で両替をして貰うなんて事もしばしばある。もっとも、10セント以下の小銭が溜まってしまった時、それらをバスの運賃箱に放り込んで処理するなんて小市民な振る舞いに利用できたりするのだが。

また、電車の場合、改札がなく、切符をきちんと買うか否かは乗車する人の良識にゆだねられる場合が多い。バンクーバーの公共交通機関には、バスとスカイトレイン(リニアモーターカー)があり、スカイトレインには改札がない。が、ホームへ向かう途中や車内で検察が行われる事があり、不正が見つかればべらぼうな額の罰金を払う事になる。しかし、改札や検察があろうがなかろうが、きちんと料金を払って乗るのが常識となっているようで、まともな良識のある人は不正をしようなどと思いもしないようだ。が、旅行者が訳もわからずタダ乗りして、運悪く検察に引っかかる、といった不運なケースもたまにあるらしい。

カナダの交通機関によく見られるシステムで、便利なのがトランスファーだ。決められた時間内ならどのようにでも乗継自由、あるいは、都市によっては往復の行程でなければ1回だけ乗継可能となる。料金を払った時にバスのドライバーに「Transfer please」と言うと、乗継チケットを渡してくれる。大抵はすぐにでもゴミになってしまいそうな細長い紙切れに、バスのコース番号や15分刻みで12時間分の時間が印刷してあり、乗った時間から1時間~2時間ほど先の箇所で千切って渡される。この紙切れに表示されている時間まで乗継ができる事になっているのだ。15分刻みと、かなりアバウトな表示なので、実際は規定の時間より5分~10分多めに取って貰える事もある。バンクーバーの場合1時間半が規定だが、実際には2時間くらい自由に乗り降りできたものだった。

ところが。4年振りにやってきたバンクーバーでは。

まず、交通機関の料金が値上がりしていた。なんでも、筆者が訪れたほんの2ヶ月前に改訂されたそうだ。次に来た時に使えるかも!と思って取っておいた回数券は、敢えなくゴミ箱行きとなった。ゾーンごとに2ドル、3ドル、4ドルという料金で、高いのはいただけないが、小銭をジャラジャラ用意しなくてよくなったのは有り難い。大きくて重いだけで不人気だった2ドル硬貨がようやく人々の歓心を買うようになったそうである。

そして、トランスファーチケット(及び回数券)が、なんと機械読み取り式のものに変わっていた!最初に料金を払う時にチケットに「分刻みで」時刻が刻印されるため、以前のように融通はきかなくなってしまった。例え1分でも規定時間を越えればチケットは無効になってしまう。以前のいい加減な状況を知っているだけに、ほんの数分遅れただけでチケットが無効になり、なんだかとても損をしたような気分に浸ってしまった事は稀ではない。

日本に比べると有り難いシステムは他にもたくさんある。

前面に自転車を固定できるラックが付いているバスがあり、2台まで運ぶ事ができるのだ。追加料金は不要。自転車で出掛けたが、疲れたのでバスで帰ろう!という怠け者には有り難い。バンクーバー市内ではあまり利用者を見かけないが、谷間の街、Kamloopsでは筆者もよく利用した。何分、多くの住宅がとてつもない坂の上にあるのだ。ダウンタウンは谷底にあるので、行きはだーっぁっと実に気持ち良く坂を駆け下りるのだが、帰りはとてもじゃないが登って帰る気にはなれなかった。

また、車椅子でそのまま乗り込めるように、バスには様々な工夫がされている。車椅子対応のバスは床が低くなっており、地面から30センチ程度。車椅子の乗客が乗り込む場合、低い車高を更に下げ、折りたたみのスロープを張り出すのだ。これはドライバーが運転席に座ったまま操作できるようになっている。そして、車内には車椅子用のスペースがあり、ベルトでしっかり固定できるようにもなっている。

もう1つ、これはシステムではないが、日本の都会では見られない現象で、筆者が気に入っている事がある。ドライバーと乗客のコミュニケーションだ。中には態度の悪い不親切なドライバーもいるが、大抵は乗客に対して実にフレンドリーだ。客の方も降りる時は「Thank you」と言って降りていく。

筆者の引越しの時、バカでかい荷物を慌てて積み込もうとしていたら、「気にしないで、ゆっくりやりな」と言ってくれたり、ドライバーの方から「何処で降りるの?」訊いてきて、着いたらすぐに降ろすのを手伝ってくれた事もある。仏頂面をしたティーンエイジャーが、何も言わずに筆者の荷物を降ろし、お礼を言う間もなくスケボーで去って行ってしまったなんて事もあった。

グレーター・バンクーバーと呼ばれる地域は意外に広い。その地域を全てバスとスカイトレインが網羅しており、車がなくても、時間さえ気にしなければ大抵何処へでも行く事ができる。ただし、土日・夜間は極端に本数が減るので要注意だ。日曜の朝に、1時間待っても1本もバスが来なかった事もある。