韓国
第2節 韓国フツーな観光案内

ソウルの地下鉄の楽しみ方

ソウルの地下鉄は旅行者にも非常に利用し易い。番線毎に色がついており、駅の構内の何処の壁にもその色のラインが描かれているのだ。2線以上が乗り入れる駅にはそれらの色が全て表示されており、乗換駅が一目瞭然だ。また乗り換えホームへの移動も、乗り換え番線の色帯の矢印に従えば良いので迷う事はない。妙にデザイン的に遊びのある駅もあり、目にも楽しかったりする。

駅名は漢字、ローマ字共に併記されており、ハングルが読めなくても何とか利用できる。逆に、ハングルが少々読めれば、地下鉄は大いなるハングル学習の場にもなる。漢字と読みを対照でき、お~、この漢字はこう読むのか、というのがわかってなかなか楽しい。街中では普通、あまり漢字表記は見られないのだ。

また、料金が非常に安く、市内なら殆ど一律料金で移動できる。その料金は、なんと700W(約70円)。ちょっと郊外に出ても800W(約80円)。100Wしか違わない。1時間以上地下鉄に乗り続けて70円。日本なら500円以上はかかりそうな距離だ。70円でこんなに乗っていていいんですか?と思う事しきり。

筆者の住む名古屋市の地下鉄は日本一料金が高いらしく、初乗り料金からしてバカみたいに高いので、余程必要でなければ滅多に利用せず、大抵は自転車かバイクで済ます。何分、それほど市中を網羅しておらず、あまり便利でもない。

が、安さゆえ、ソウルの地下鉄は大いに利用した。これだけ安ければ、1区間ぐらい歩いて節約しよう、というケチな考えも働かない。また、「あっちの市場で買った方が安いから」と言って、その市場までの移動費が高くついては話にならないが、高々数十円ならそれほどの負担でもない。見物も兼ねてソウル郊外の市場にも出掛けたものである。

1つ難を挙げれば、行き先方向表示がわかりにくい事だろうか。全部で9本の路線があるので、すぐに各番線の終着駅名を覚え込む訳にもいかない。環状線なんかはもっと厄介だ。毎回、案内図と照らし合わせなければならず、方向の判別にちょっと時間がかかる。実際、慌てていて違う方向行きの電車に乗ってしまい、一駅先で逆方向行きに乗り換える、なんて事もしてしまった。この辺りの事情は東京の地下鉄と同じだろうか。が、ヘンにたくさんの私鉄が乗り入れていないので、旅行者にとってはむしろ東京よりは利用が容易である。

空港のインフォメーションでは、市内中心部の地図や地下鉄案内図など、色々有用な情報を貰う事ができる。特に、名刺サイズに折り畳める地下鉄案内図はかなり重宝した。ハングル表記なので読めなければ使えないが、漢字表記のみ、ローマ字表記のみの物よりむしろ役に立つ事が多かった。

知人を訪ねて地下鉄で最寄り駅まで行った時、「よくここまで来られたね!」と驚かれた。「自分が外国に行ったら多分そんな風にはできないと思うよ」とまでおっしゃる。だってソウルの地下鉄はよく整備されているからね、と当然の事を申し上げたが、それでも…、と相手は口ごもる。まァ、このように言う人は外国であろうが母国であろうが、イマイチ方向感覚が優れていない類なのかもしれない。

また、別の人と会った時、別れ際、この先1人で移動する事をやけに心配された。地下鉄は何度も利用しているし、地図も持っているから大丈夫だというのに、「本当に大丈夫ですか?心配だからせめて駅までついて行きます。」と言われた。う~む、たとえその国の言葉が皆目わからないとしても、「地下鉄の利用」「スーパーで買い物」は阿呆でもできるという事をご存知ないのだろうか?まァ、こんなところは韓国人の親切さの現れでもあるのだけど…。

韓国の地下鉄に乗っていて面白いのは、電車の中に物売りが現れる事だ。百円程度の怪しい物品を簡易手押し車に入れ、電車に乗り込んでくる。そして声高に口上を述べ立てるのだ。如何にも怪しい。しかし不思議な事に、たま~に、無表情に札を差し出してこれを買う人がいる。サクラなのかもしれない。

また、改札内外に、わりと大きな小売店がある。ちょっとしたおやつを売るスタンドから、服や靴を多数並べた、ちゃんとした店構えの物まで。ちょっと小腹が空いたな、と思ったら、地下鉄の駅に潜り込めばまず間違いなくチープな食べ物を買う事ができる。が、果たして構内(しかも改札内)で靴や服を買う人がいるのかどうか。キオスクと呼ぶにはあまりにも大きい小売店。これはなんだか不思議な光景だった。

ところで、新しくインチョン空港ができてから、市内へのアクセスが格段に悪くなった。とにかく遠い。直通のリムジンバスに乗っても1時間以上はかかるだろうか。交通の状態が悪ければもっとかかる。

かかる時間はトントンかもしれないが、地下鉄を利用して安く市内へ出る方法がある。今は国内線専用となった金浦空港までバスで行き、そこから地下鉄を使うのだ。2004年1月現在のバス料金は4500W、地下鉄が郊外からの料金で800W、計5300Wで済む。7000Wで市内に出られる空港リムジンもあるから、まァ、敢えて苦労をしてみたい、という方にはちょっとお勧めだ。

追記 2004年末現在、地下鉄料金は大幅に値上げされている。1区間900W、100W単位で1400Wまで、5区間に細分化された。空港バスも6000Wに。右の手はもはやあまりお手頃価格とは言えないようだ。2004年現在の状況についていは「物価が上昇する」もご参考に。因みに、右の文章を書いた当時は乗り間違いでオタオタしていた筆者も、訪韓5回目にして各番線の終着駅名が頭に入り、ついに間違いなく乗りこなせるようになった。めでたし。