韓国
第1節 韓国のフツーな人々

韓国再訪か!

所用があって、一緒に韓国公演をしたマジシャン仲間と会った時、ちょうど筆者宛に預かり物をしてくれており、ついでにそれを受け取った。物はビデオテープで、マジックのコンテストに出場した若者達のドキュメンタリー番組だった。ゲストとして出演していた筆者もほんのちょびっと顔を出していたが、よりによって出現させたモノをぼとん、と落とした上に、スゴイ形相で観客を睨みつけている、この世から抹消したいような部分が使われていた。もっとマシな部分はなかったのか…。

それにしても、なんだか他の人々の部分も、えぇぇ~~~!そんな所映しちゃって良いんですか???と、ネタばらしもいいトコな場面がどっさりあったので、まァ、番組のディレクターがマジックの事をよく知らない人だった可能性もある。しかし、最近急速に盛り上がりつつある韓国マジック界の根幹を垣間見られる、面白い番組であった。

ところで、そのビデオを貰ってきたその晩、韓国から電話がかかってきた。イベント出演時、通訳をしてくれた韓国人女性からだった。まずは先方、筆者の書いた礼状に返事を出せなかった事をしきりに詫びる。家の中がゴタゴタしていてなんだか大変だったそうだ。そして、今は姑(って、ちゃんと日本語でおっしゃる)の世話からも解放され、落ち着いているので「秋の韓国にも遊びに来てくださいよ」と。

随分簡単におっしゃるなァ…。

ま、1番近い外国だから、下手すれば国内旅行より安上がりとはいえ、一応、往復するだけで3日分の給料が飛んで行くんですけど…。

ところが、間の悪い(?)事に。

かねてからチマチマ貯めていた某航空会社のマイルが、特典航空券引き換え可能な最低量だけ貯まっていた。これで国内1区間往復か韓国往復ができる。しかし、チマチマ貯めていただけあって、有効期限も間近である。年内に便を決めて予約しなければならない。

韓国再訪か、はたまた韓国より遠い国内の南の島にでも行くか、と、かなり悩んだ末、エコツアー・オタクの友人達から「絶対屋久島お勧め!!!」と猛烈な推薦を受け、心は殆ど屋久島に決まりかけていた、ちょうどその時、この電話である。もう、心はぐらぐらに揺れ動いた。

そもそも、筆者はそう旅行好きではない。エキゾチック沖縄や、東洋のガラパゴス、はたまた日本の気候が垂直分布する屋久島も相当魅力的だが、現地に知人がいる訳ではない。観光地巡りには興味がないので、1人で出掛けて行ってハテ、何をしよう、てな事になりそうだった。

それにひきかえ韓国は。

なんだかんだで知人がわんさかいる。私の家に泊まってね、一緒にアレをしようコレをしようと言う人がいるし、ある程度ソウルの地理にも慣れたので、1人で行きたい所もいくつかある。絶対こっちの方が楽しそうなのだ。

そんな折。

パソコンに無理矢理同包されてくるチャットツールがあるのだが、勝手に起動して鬱陶しいので、設定を変え、暫く封じ込めてあった。が、この時何故だか随分久し振りにログインする気になった。よりによって、この時、今まで1度もオンラインだった事がない、韓国人の友人がログイン状態だったのだ。彼は前回筆者を招待してくれた団体の一員であり、また、電話をくれた女性の従兄弟である。

「あんにょん?オンニ(お姉さん)から電話貰ったんだよ!そんなこんなでまた韓国に行くかも!!」

あぁぁ、つい勢いで書いてしまった…。既に韓国に浮気を許してしまったのか。破れかぶれになった筆者は、決心の地盤を更に強固にするかのように、他の知人達にも連絡を取った。すぐにメールで返事がやってきて、いつ来るの?期間を教えて。泊まる所も予約してあげるし、案内もしてあげるよ!!!

あぁ、韓国人ってステキ…。コレが自分を中心にしか世界が回っていない北米人なら、返事が返ってくるのにさえ、最低3日はかかるというのに…。

結局、年が明けてすぐに韓国へ行く事になった。よりによって、1年で最も寒い真冬のソウルへ…。