ドイツ
第3節 ドイツ就職活動の旅

何処へ行ってもレープクーヘン

レープクーヘンを初めて食べたのは2年前だった。筆者が参加していたイベントのスタッフのオバサンが、「レープクーヘンって食べたことある?」と訊いて来て、「ない」と答えると、筆者のためにわざわざ買って来てくれたのだ。食べてみると、スパイスの味が利いたオトナな味わい。結構好みである。

そんなことがあったのはすっかり忘れていた頃、この夏の訪独時、今度は別の友人に「レープクーヘンって食べたことある?」と訊かれた。ドイツ人というのは外国人にレープクーヘンを食べさせるのが趣味なのだろうか?

彼女は、この近くにとっても美味いレープクーヘンを売る店があるので買って行こう、と言う。が、残念ながらその日は日曜で、その店は閉まっていた。

そんなことがあったのは忘れていた頃、この秋の訪独時、同じ友人が筆者のためにレープクーヘンを一箱買ってきてくれた。以前オバサンに貰ったものとは違って、洒落たデザインの箱に入っている。菓子の直径も2倍近くある。箱にはニュルンベルク産、と書いてある。そう、この菓子はニュルンベルク発祥らしい。シュトーレンと同じく、スパイスが効いており、木の実がたくさん入った焼き菓子である。底に白いえびせんべい生地のようなものが張り付いている。丸い形のものが多く、直径数センチのものが数個入ったパックがスーパーなどでは1ユーロ以下で買える。友人がくれたものはもっと品質の良いものらしいが、それでも彼女が本当に買いたかったものではないという。時間がなくて件の店まで買いにいけなかったのだとか。

数個セットで売られているものは、プレーンタイプ、チョコレートでコーティングされたもの、砂糖衣のかかったもの等、2~3種類入っている。「チョコレートのが一番美味いのに、セットで売っている奴は、いつも他の種類と一緒なのよね」と友人は忌々しそうに言うのだが、筆者にとってはチョコ以外の奴の方がさっぱりしていて食べやすい。

さて、そんなことがあったのを忘れる間もなく同じ年の秋にドイツを再訪した際、1つ目の滞在先で筆者はまたもやレープクーヘンにめぐり逢う。クリスマス菓子なので時期も時期なのだが、なにしろ、このチョコ味レープクーヘン好きの友人に毎回会っていると言うのもその遭遇率の高さに寄与している。我々は2年前と同じイベントに居候状態で参加していたのだが、彼女は出演者・スタッフへの差し入れとして、両手で抱えなければならないほど大きな箱に一杯のチョコ・レープクーヘンを持ってきたのであった。コレは前回と前々回買い損ねた例の店の奴か、と訊くと、そうだ、と答える。味は…シュトーレンほど量販品との違いはないように思える。そして…やはりチョコ味はくどい。ドイツ人たちは大喜びで2つ3つと食らっていたが、筆者には1つで充分だった。

さて、次の滞在先へ向かうと、なんと、ココにもレープクーヘンが待っていた。お世話になったウチのオバサンが、筆者のために1箱用意しておいてくれたのである。やはりドイツ人というのは外国人にレープクーヘンを食べさせるのが趣味なのだろう。

包装の形態としては、スーパーの量販品のよう。数個のレープクーヘンが四角な箱に下半分覆われ、上半分は透明フィルムがかかっている。が、大きさは友人がくれたものと同じような大きさ。箱には「とっても美味い!(Sehr gut!)」と書いてあるから、普通の量販品よりは美味いのかもしれない。構成はチョコのみ。ドイツ人的にはやはりチョコ味が好み?食べてみると、まぁまぁ美味かった。

レープクーヘンにそれほど思い入れがあったワケでもないが、こうも頻繁にめぐり逢うと、何かの啓示のように思えなくもない。したがって、この時の土産品としてレープクーヘンが選ばれたのであるが。

確かに、スーパーでは1箱1ユーロ以下で買える。味もそんなに劣るわけでもない。ならばそれでも土産として問題はないわけだが、せめてオバサンが用意しておいてくれたクラス位のものを求めたかった。しかし、その時いたのは繁華な地域の少ない街のこと、容易には見つけられなかった。なので、オバサンの姉に適当な店はないかどうか訊いてみる(オバサン自身は旅行中で不在)。すると、オバサンはこう言う。

「アタシの彼がレープクーヘン狂だから、彼に聞いてみるといいわ」

(なんと、60過ぎて彼がいるんですね)

で、彼を捕まえて訊いてみると、「ならばニュルンベルクへ行け」と。まぁ、コレは冗談だが、彼のお薦めの品を買うには1つ問題があった。筆者がこの質問をしたのは日曜日で、通常、商店は休みである。そして筆者が発つのはその翌日だった。最後の手段は空港で買うくらいか。しかし、空港の土産物となると価格がどえらい跳ね上がる。空港で値段に面食らって買うのを諦めることも想定して、筆者は翌朝、近所のスーパーで量販品をいくつか買い求めておいた。

案の定、空港の売店で値段を見て…驚いた!!!!土産物らしく、綺麗な缶に入っているものの…その価格は8ユーロを下らない!!!!高いものは20ユーロ以上するぞ!しかも…直径10センチ余りのものが5~6個しか入っていない。一旦は諦めかけた筆者だったが、いつもお世話になりまくっているオバに「ドイツのお菓子をお土産買って行きま~す!」と言った手前、オシャレな缶入りレープクーヘンを1つだけ買って行くことにしたのである。

オバが菓子の味を気に入ったかどうかは知らないが、とりあえず、ゴージャスな箱の外観に大喜びしてくれた。なんだかポイントがずれている気がしないでもないが、まぁ、買っていった甲斐はあったようだ。で、その様子を見ていたオバの姉である筆者の母がこうつぶやく。「昔この子(=オバ)にこういう綺麗な箱を買ってやりたかったのよ」昔はこんなカンカンですら容易に買えなかったと言う。

因みに、レープクーヘン狂の彼によると、エリーゼン・レープクーヘンと呼ばれるものが質がいいらしい。逆に言うと、上質な材料を使ったものだけが、「エリーゼン」を冠する事が許されているらしい。ドイツの食品の名称には、使用原料や産地によるこうした厳密な決まりがあるものが多い。

でもって、シュミットという店のモノが美味いのだとか。ここのことだろうか。

ホンのついでだが、クリスマス商戦夥しいこの年末、ナント日本のパン屋でレープクーヘンを発見した。柔なプラスチックの袋に4個入り、1700円?高!!!!!!