ラテン
ラテン人とは気が合わない

いいコだったけどノリはラテンだった…

知り合いから急に分不相応なシゴトを頼まれた事があった。分不相応とは、即ち自分の実力ではこなしきれない高度なおシゴトである。キッパリお断りすればよかったのだが、なんだかんだ情に流されて引き受けてしまったアタシがバカだった…想像はしていたけれど、まったくもって想像通り、パーフェクトにこなすことは出来なかったのだ。

一応、その高度なお仕事をこなしきれるヒトに心当たりがあったので、その人に振ろうとしたのだが、生憎予定が入っていてムリだった。その他に責任を持って推薦できる方を思いつけなかったし、先方も全く当てがなかったようで、そして何より急だった。

シゴトに対する自身の不出来振りとか、そのシゴトを依頼してきた組織のゲストへの配慮の足りなさなど、申し上げたき義はイロイロあれど、ココではそんな愚痴は割愛して、面白おかしいことだけお伝えしよう。

そのシゴトで対峙したのは、筆者の苦手なラテン人である。かねてから、ハイパーマイペース+お気楽気質のラテン人に振り回されて散々な目に遭ってきた経験があるので、勿論警戒はしていた。相手は意外と良い子だったので、まー以前ほど酷い目には遭わなかったのだが、「う~ん、ヤハリ君はラテンのヒトだね!」と再確認できる行為は1時間に1度くらいは目にする事が可能だったよ!

まず。

事の発端は少し前にご本人がノートパソコンを紛失したこと。パソコンを紛失するなど、空き巣に入られるのでなければ公共の場に放置する以外に方法がないので、大概何処かにウッカリ置き忘れたのだろうよ、と憶測していたのだが、実際に訊いてみると、とどのつまりは、即ちそういうコトであった。

これに関連して。

本人のパソコンがないので、仕事で使うデータをイベント主催者側が用意したパソコンに落とすことになっていたのだが。テクニカルチェックをする直前になって、そのデータを入れたCDがないない、と騒ぎ出す。スタッフが一生懸命会場中を探したのだが、見つからない。結局、もともと持ってきていなかったようで、一旦ホテルの自室に行ってデータを持ってきた。その間、スタッフは手持ち無沙汰でひたすら待つ事になる。こーゆー時、済まながって急いで戻って来るということは決してしないのもラテン人のタイヘン羨ましい気質である。

これに関してもう1つ。

シゴトが終わって荷物を片付けている時、そういえばあのCDをまだ返してもらってない、と言い出す。どうやら借りていたパソコンに入ったままのようだ。片付けもトロトロしていてタダでさえ遅れており(外には早く控え室を片付けたくてイライラしたスタッフが…)、大体本人に確認に行かせたら一体いつ解決するのかわからないし、そもそも自分自身で解決しようと言う様子も見られなかった。ラテン人に多くを期待しちゃイカン、ということを心得ている筆者は、そりゃもう、スタッフに訊いて回り(=タライ回しにされ)、コトを収拾いたしましたよ。最終的には気の利く若いスタッフの方がパソコンの持ち主に連絡を取ってくれ、CDを受け取って持ち主の滞在先のホテルにわざわざ足を運んで届けてくださったのだ。

てゆーか、アンタらのトコのゲスト様のご用件なのに、何ゆえそうもタライ回す???

因みに、この段階では筆者の役割は既に終わっていたのだが、このラテン人のケアを出来るヒトがナゼか忽然と消えてしまったため、やむにやまれず(だって放っておけんでしょう?)ボランティアで世話を焼いていた。だとゆーのに一部のスタッフのオジサンからは、まるでそのヒトの付き人か何かのような扱われよう…。

まあいい。

イベント主催者側の連絡不行き届きもあって、控え室を片付ける前にまずホテルのチェックアウトをしろ、と言われた件のラテン人。ホテルと会場を何度も往復させられて気の毒なのだが、だからと言って余り苦にしないのもラテン人のタイヘン羨ましい気質である。と同時に空気を読まず、あくまでマイペースでシゴトを片付けるのもタイヘン羨ましい…

外でイライラしているスタッフのオジサンが、「いつ終わるの?」トカ、そもそも外部の人間である筆者に向かって上から目線で訊いてくるので、「まー 20分はかかるんじゃないですか?」とプチ切れ寸止め状態で答えたものの、20分後に控え室を覗いても…あれ?20分前と余り状況変わっていなくない???

うらやましいなぁ、そのゆったり感…
サウイフモノニ、ワタシモナリタイ。

こんな時でも一服するのは忘れないのも、またラテン人である。この頃我が国では、喜ばしくも喫煙エリアが厳しく規制されているので、タバコを吸えるトコロを探すのもなかなかタイヘンなのよね。自販機はタスポが必要だから、ガイジンさんは更に面倒なのよね。その上自販機には気に入った銘柄がなかったりするのよね。喫煙可能場所を探すのも、タバコはドコで買えるのか訊ねるのも、勿論筆者のシゴト。イヤ、既にシゴトではないのですが、この時点では。

と、始終こんな感じではあったものの、救いだったのは、先にも書いたようにこのラテン人がなかなかよく出来た子だったこと。シゴトに対する技術が未熟だった筆者のために、普通なら割かなくて良いはずの多大な時間を割いて打ち合わせに付き合ってくれた。だからこそ、イロイロ助けてあげなきゃ、という気持ちもあったし、筆者だって外国ではいろんな方にお世話になっているから、こっちに外国のお客さんが来た時は同じコトをしてあげるのがフツーだと思っている。

他所でイロイロ良くしてもらっているからこそ、主催者側の外国人ゲストに対する連絡不行き届き加減とか、筆者の仕事の出来に対する先方の認識の甘さとか、スッゴイ気になってしまったのだけど…

イベント終了後、スバラシイ働き振りでした!と筆者にお世辞を言ってくるスタッフに、今回は筆者の力不足が原因でゲストに多大な労力を強いてしまったことを説明し、「ゲストと観客のために最良のスタッフを用意すべき」だと言うことを一応は進言してみたのだけど、恐ろしい事に全く理解してくれなかった。「まあ、こんな機会があったら、ひとつ、またよろしく」って…つまりは筆者の言ったことは何1つ伝わっていないってコトだよね?ぅぅぅ。暖簾に腕押しってこういうことかー、という実例も目に出来た1日であった。

あ、結局最後に愚痴っちゃったね。ゴメン。