カナダ
第1節 カナダのフツーの人々

大人も子供もチャット狂時代

このところ日本でも目覚ましく普及しているインターネットは、カナダではさらに輪をかけて大流行だ。接続料の安さもその原因の1つかもしれない。何しろ、市内通話料は基本料金のみ、つまりいくら使っても一律なのだ。ま、現在では常時接続環境が主流になりつつあるけれど、それでも未だにダイヤルアップ接続人気は根強い。何しろ、プロバイダーとの接続料金が一定なら、それ以上払う必要はないのである。1ヶ月20ドル程度で繋ぎ放題なのだ。また、時間や地域の制限、そして鬱陶しいポップアップ広告があるものの、フリープロバイダーと契約する事もでき、コレならば全くタダでネットに接続できてしまう。

そんな訳で、ダイヤルアップ接続のまま延々とネットに繋ぎ続ける人もいる訳で、その間、その人に電話連絡が取れな~い、などという、全くカナダ人らしい他人の迷惑そっちのけ状態な事にもなったりする。チャットにハマりまくっている筆者の知り合いのオバさんは、知人達からのそういった苦情に音を上げ、ついに常時接続契約をする事にしたという。

とにかく、猫も杓子もインターネットだ。彼らをコンピュータの前に駆り立てるものは、チャット、そしてインターネットゲーム。ティーンエイジャーの男の子は家に居る間中ゲーム。女の子はチャット。ついさっき会ってきたばかりの友人とチャットで話し、携帯電話で話し。何をそんなに話す事があるんだろうね?

良い大人だって負けてはいない。仕事から帰って夕食をとり、残りの時間は寝るまでチャット。1対1で話すものでも、いくつもウインドウを並べて数人1度に相手にしている。

前述の、ダイヤルアップから常時接続に変えたオバさんは、モデムの接続が上手く行かず、暫く自分のコンピュータを使う事ができなかった。仕方なく、息子達の留守を狙っては彼らの部屋に忍び込み、パチャパチャやっていた。「私のコンピュータが恋しいわ!」と、事あるごとに恨めしそうに言っていたので、一体どんな重要な仕事をしているのかと思ったら、チャットかよ…。いそいそとコンピュータールームに向かう彼らの様子はなんだか滑稽だ。

筆者自身、このチャットなるものをやってみた事はあり、ま、それなりに面白かったが、チャットルームの人数が増えてくると誰と話しているのやらよくわからなくなる状況が実に鬱陶しかった。こんなものに毎晩毎晩何時間も時間を費やすのは、実に生産性がない事だと思った。遠く離れている人と話せるから良いと言う人もいるが、離れている人とはたまに会って話すからこそ、久し振りに会った時の感慨も深いというものだ。筆者はあまりお喋りが好きな方ではないが、「お喋りを楽しむ」というのなら、実際に会ってしたいと思う。

チャットやりたさのためにわざわざコンピュータを購入する人もいるかと思えば、電子メールを使うためだけに、20万円以上のラップトップコンピューターを買ってしまった人もいた(日本人)。まァ、自分の給料をどう使おうと勝手だが、メールだけならもっと安易にできる手段があるだろうに…。

また、チャットにはまりまくっている別のオバさんは、コンピュータ使用歴数年以上。だというのにファイルの削除の仕方(ゴミ箱にファイルを移す事)も知らなかった!ひょっとして、チャットとメールとネットサーフィンしかした事がなかったのだろうか???

コンピュータが大普及するのは結構だが、なんだか流行に乗ってつい買ってしまったという人は少なくないだろう。まァ、ホントに、自分の給料をどう使おうと勝手だが、コンピュータというものは、その値段に見合ってチャットとメールとネットサーフィン以外にも、実に色々な事ができるのに、勿体無いと思う事しきりである。