韓国
第2節 韓国フツーな観光案内

チョコパイのナゾ

韓国の映画やドラマにはやたらと「チョコパイ」が登場する。やたら、というのは言い過ぎかもしれないのだが、筆者は別に韓国ドラマや映画のファンという訳ではなく、本数をそれほど見ているのではないワリには目にする頻度が高いのだ。

初めは「JSA」という映画で見た。北朝鮮の兵士と仲良くなった韓国の兵士がチョコパイをあげる場面がある。南へ来ればこんな美味いものが食べられるんだぞ、と韓国の兵士が言うと、いつか北でもこんなものが作れるようになるといい、と北の兵士は答えるのだ。(将軍様が君臨しているうちはムリだと思う。作れても庶民の口には入らないだろう)

次は「おばあちゃんの家」という映画。近所に店舗も無いような、ど田舎の祖母の家に預けられた我侭な孫がチョコパイが食べたい、と駄々をこねる。現金収入が殆ど無いおばあちゃんは何とか工面して手に入れてあげるのだ。

この2つの場面を見た限りでも、チョコパイは韓国人にとって何か特別な意味のあるお菓子なのだろーか、という気はしていた。なにしろ、我が国にもロッテのチョコパイという似た商品はあるものの、この商品名が敢えてドラマや映画で取り上げられることなどないし、他のお菓子でもそんなことは、まずない。

ちなみに、筆者はコレまで韓国のチョコパイも韓国にも会社があるロッテが出しているものだと思い込んでいたのだが、オリオン社という別の菓子メーカーから出ているようだ。これは中身のクリーム部分はマシュマロで、どちらかと言うと森永エンゼルパイに近い。一応、ロッテからも出ているらしいが、最も人気があるのがオリオン社のものらしい。

で、チョコパイのハナシはしばらく忘れていたのだが、最近ウッカリ見てしまった韓国ドラマに、かなり重要なアイテムとして、これでもか、これでもか、と頻繁に登場したため、かねてからの疑問が再燃し始めた。

スッキリしないのに我慢できなくなって、日本語の上手な韓国人の知り合いに聞いてみた。すると、予想以上にオモシロイ答えが返ってきたのだ!

韓国のチョコパイは我が国のソレよりも割安感のあるお菓子らしく、安くて美味しいので、皆で集まって「情を交わす」時に何かと登場するモノであるそうだ。軍隊生活を初めとする団体生活、あるいは友達とのパーティ、家族揃ってのおやつ、ナドナド。とりわけ軍隊では、おやつとして配られたり、家族から差し入れをされたり、なんてコトもあるらしく、でもって、軍隊生活の辛さを思い、トイレに隠れて泣きながら1人で食べたりするのだとか!!!「涙のチョコパイ」とも言い、「軍隊」=「チョコパイ」くらいの図式が成り立つんだそうな。

想像以上に大きな意味があったのだね!

で、実際のところ、オリオン社のチョコパイの年間の売上は相当なものらしく、今や世界各国に輸出されているんだそうな。

因みに、オリオン社のチョコパイのパッケージには「情」という文字が印刷されている。筆者が韓国へ行った時、宿泊先で会った西洋人の子にこの漢字の意味を問われたので、日本語における漢字の意味という前提で教えてあげると、カレは箱をひっくり返して英語バージョンが印刷されている裏面を見せた。「情」と同じ位置に「It’s now!」と印刷されており、「なんか全然意味が違うじゃん?」と言われた。そんなこたー、当時のアタシの知ったこっちゃなかったのだが、韓国のチョコパイ事情の詳細を知った今では、「さあ!今から皆でチョコパイ食べましょう!」くらいの意味なのでは?と思う。