韓国
第1節 韓国のフツーな人々

タイフーン

※まだ見ていない方はネタバレ注意!!

タイフーンという韓国映画を見てきた。韓国語のタイトルは「てぷん」である。「てぷん」…かぁ…。迫力ないなぁ…。

台風の「台」は通常平音なのに、ハングルでは激音だったので、気になって調べたら、韓国では「颱」の文字が使われているからなのであった。本来こっちのが正しい。

で、肝心の映画は。

タイ、ロシアのロケ敢行、お家芸の迫力ある戦闘シーンなど、なかなか金のかかっていそうな映画である。登場人物も多国籍にわたり、筆者が確認できただけで、タイ語、ロシア語、英語、韓国・朝鮮語、中国語、ドイツ語、と、7ヶ国語が飛び交っていた!

余談だが、タイ語の数字は韓国語に似ている!両言語とも、もともと数字は漢字起源のせいか、10、20、30あたりはそっくりで、映画の中で韓国人俳優がタイ語を話していても、あれ?数字だけ韓国語?と勘違いしてしまいそうだった。

さて、これは一体どんな映画だったかというのを物凄く簡単にまとめると。

「コリアンが立てた作戦はことごとく不発に終わる話」

主人公の捜査員は、盗まれた兵器の行方を追う捜査を韓国政府に命じられるのだが、犯人を取り押さえる直前に、捜査そのものが他国の介入によって打ち切られてしまう。しかし「母国の危機を黙って見ておれん!」と今度は彼個人の独断で勝手に「非公式の作戦」をでっち上げ、しかも同期の兵士たちを巻き込んでテロを防ぎに走るも、米軍による魚雷攻撃のせいだか台風のせいだかよくわからんうちに収拾がついて(ついたのか???)しまう。ていうか、彼が出かけていった意味無し(巻き添え食った同期の兵士が気の毒だ)。母宛に遺書まで書いて決死の覚悟で出かけた捜査員は、すっきりした結果を得られないまま、結局中途半端に生き残ってしまった。

また、一族揃って脱北したものの韓国に受け入れを拒否された上に家族を皆殺しにされ、何故か南だけに恨みを持ちつつ(宣伝では南北両方と言っていたが、実際はそうでもない)海賊として暮らしていた男は、盗んだ兵器で韓国を放射能汚染させようと目論むが、20年ぶりに再会した生き別れの姉の説得により???やめてしまう。(そして爆弾を積載するはずだった風船をカラのまま飛ばそうとする。代わりに「南のお友達へ」という手紙でも入れたのかな???)

で。

得られたのは、2人の男の間で約束された来世での友情???

なんじゃこりゃ。

え~っと、韓国で空前の大ヒットしたという割には…なんか拍子抜け…する話…だよな…。

大体、祖国のためなら何でもやってしまいそうな叩き上げの軍人が、「来世では友達に」とか甘い事を言ったりするものだろうか…。彼は1度、対象を狙撃するチャンスがあったのに、あからさまに見逃している。このヘンに「感動巨編狙い」が見え隠れしてや~らしいなー。深刻な主題を扱っているのだから、そのあたり、冷徹に押し進めてくれればむしろその方が感動できたかもしれないのに。脱北直後の幸せそうな一族の、取ってつけたようなラストの回想シーンは妙に明るくて切な過ぎたが、これもあからさまに「感動」目論見過ぎで、かえって白けてしまった。

ところで、この映画、てっきり海賊役のチャン・ドンゴンが主役だと思っていたのだが…ていうか、日本ではそう宣伝されているし、もう1人の主役は、名前さえ滅多に出てこない。が、彼の単独主演というよりは、捜査員役の俳優と双璧をなす形で演出されている。そして、物語はむしろこちらの捜査員の目線で語られている。これがまた、地味ーな顔をした、日本では殆ど人気が出なさそうな俳優(「イル・マーレ」に出ていた)が演じているのだ。人気のある俳優の方が主役であるかのように見せかけるなんてことは、まー、日本の配給会社のやりそうなことではあるが。

日本版公式サイトを見てみると、やれ「ドンゴン様」が来日だの、「ドンゴン様」写真展だの、とにかく「ドンゴン様」だけを持ち上げまくっている。映画の解説やストーリー紹介も、なんだか「ドンゴン様」寄りに書かれている。写真の枚数も多い!比較のためにオリジナルの公式サイトを見てみたら、2人の主役はほぼ同列に扱われているようだった。まー、日本における「興行的」主役は実質「ドンゴン様」なのだから、仕方が無いのか。

遅ればせながら、チャン・ドンゴンってダレ?という方のために一応解説をしておくと、「チャミスル」のCMで「アナタノコトガスキダカラ!!」と波打ち際でカッコ悪く叫んでいた人である(解説?)。韓国人臭さのない、濃い~顔をした俳優で、タッパがあるので結構見栄えがする。先だってはチェン・カイコー監督の「PROMISE」に出演するなど、国外でも活躍しているらしい。日本でも人気はあるようだが、どうやら単なるオバさんフィーバーだけでもないようだ。「タイフーン」の演技はなんだかわざとらしく、暑苦しかったので、演技の実力のほどは筆者にはまだ判断できないのだが、どんなアジア人にでも化けられそうな濃い容姿のお陰で今後の国外での活躍は大いに期待できそうである。

因みに、韓国好きの筆者の後輩、Nは、以前この俳優が大好きで、事あるごとに大騒ぎしていたのだが、「チャミスル」のCMがあまりにイケていなかったので、ファンをやめたとかやめなかったとか…

人気韓国人俳優にCMで付け焼刃の日本語を無闇に喋らせるのはやめて欲しい。幼児語にも聞こえかねないから気の毒だ…。